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五月の雨

ただの雑記帳。描いた絵とか読んだ本とか考え事とか。

2016.11.15

日記

 

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僕の小学校は体育館のステージ下に地下倉庫がありました。

暗くてひんやり湿った空気。教室に収まらなかった机や椅子が並ぶ場所です。

いつ行っても、年に一度だけ床にかけるワックスの、つんとした匂いが鼻につく場所でした。

そこは児童は立ち入り禁止なんですけど。

 

僕らは放課後、先生の目を盗んでそこへ行き、誰にも知られたくない秘密の遊びをするのでありました。

 

誰々が誰々を好きだとかはまだ可愛いほうで、誰々ちゃんはもう生理がはじまったらしいぜと云う密告とか、気持ちのいいキスの仕方とか、蜻蛉の残虐な殺し方(僕らはそれをマッシュポテトと呼んでいました)とか、そう云う類のお話です。

 

普段薄暗い地下室は、夕方だけ西陽が上側にある小さい窓から差し込んで、見るもの全てがオレンジ色か黒色のどちらかになります。

空気を舞う塵がはっきり見えて、暖かいのか冷たいのかよく分からない。狭くて静かな部屋の中は、ちょっと悪いこととか、恥ずかしいこととか、そう云ういけないことに積極的になれるのです。

 

あの時間のあの地下室はどこにも負けないくらい不思議な雰囲気だった。

 

列をなす机の下をくぐれば、どこか知らない所へ行けそうな気がしたし、途中で蟋蟀や蛾の死骸を見つけて悲鳴をあげたり(蜻蛉はマッシュポテトなのに)、ここを秘密基地に改造しようと夢を語ったり、そうしたらポテトチップスいっぱい持ってきて、ここに隠そうね、と企んだり。

 

あの頃のときめきとか謎の高揚感は、もう味わえないんじゃないかな、と思うであります。

 

僕らは、真っ直ぐ家に帰る子たちよりも、職員室でコーヒーを飲んでる先生よりも、ずっと濃密な時間を過ごしているんだぜ、と自負していたのでしょう。(勿論、濃密と云う言葉は知りませんでしたが)

 

 

今でも僕はあのとき過ごした時間、空間、そして雰囲気に、片想いをしているのだと思います。